「相変わらずですね、皆さん」「ははは、そう簡単に人は変わらないさ。もちろん、君も」天井から来るあたりがね、と山南が笑う。空いた天井に目をやると、山崎が満面の笑顔で手を振っていた。こんな状況にしといて、後は高見の見物を決め込むらしい。紫音はやれやれと肩を竦め、縛られたまま上半身を何とか起こした。「久しぶりに京に立ち寄ったからついでにここに来ただけじゃないですか」「ついでで来るんじゃねぇ!つぅか忍び込むな!いいか?新撰組はいまや泣く子も黙る悪鬼の巣窟だ!…って聞けぇええぃっ!!」「土方さん、company formation in hong kongてるんでしょう?」土方が青筋をたてて怒鳴るのを、首を傾げて紫音は近藤に尋ねる。それは土方が新撰組の変貌を語っているのに、華麗に無視され、挙げ句楽しそうに話していたからなのだが…「ははは、更年期かもしれんな」渦中に自分がいる事を悟り、ごまかす近藤。山南は柔和な笑みを苦笑に変えて土方の肩を叩いて慰めた。「ところでいい加減解いてくれませんか?」「あん?目的は何だ?答えたら解いてやるよ」「私、体治ったんですよ」「そいつぁ良かったな。…で?」「なのでお知らせに。皆さん心配して下さいましたし。それに侵入したのも、口で言うよりも行動で示した方がわかりいいと思いまして」驚かせたかったから、なんて言ったら話が長くなりそうと見込んだ紫音はすらすらと嘘を並べる。土方は疑惑たっぷりの視線を紫音に浴びせた後、やがて額を押さえてため息をついた。「あぁもういい。ったくよぉ…俺は鬼の副長だぜ?こんな姿隊士たちに見せらんねぇよ」「ははは、確かにお前のそんな姿は久しぶりだ!」紫音が去ったあの日に、誓った『鬼』は、甘さを消していた。幼い頃から知っている近藤にとってはそれは悲しい事でもあった。自ら悪役に投じるその姿は痛々しく見えたからだ。だから今見せる姿が、たまらなく嬉しかった。破顔する近藤を見て、照れ臭いのか土方は頭をかいた。「ところで最近辻斬りが出ているそうですね」ようやく縄から解放された紫音は肩を回しながら言った。土方はまた眉間にシワを寄せて紫音を睨みつける。「…どこから聞いた?」にっこり、と笑って紫音は返す。威圧されても全く堪えないと言わんばかりの笑顔に土方は諦めた。「町の人が噂してましたよ。皆さん怖いみたいですね」「町人、武士、関係なしに斬られているからなぁ。夜に出歩く者はいなくなったよ」「見回りを増やしてはいるんだけどね…」近藤と山南は困ったように顔を見合わせた。証拠らしい証拠も残さないその犯人は未だに誰とも掴めていないらしい。「長州の奴らは最近ナリを潜めてやがるしな」「嵐の前の静けさ、じゃないといいけどね…」「というと辻斬りは長州ではないんですか?」「確かに奴らはやり方が荒っぽいが…無差別に襲う意味が見出だせねぇんだよ。京じゃぁ長州贔屓の連中が多い。わざわざ反感かうような真似するとは思えねぇな」語り終えて、ふと土方は気付いてしまった。紫音も交えて話し合いが始まってしまっている事に。紫音としては勝手に始まったので不可抗力なのだが。「つぅかお前何しらっと聞いてんだよ!?」「え?しばらくこちらにいるので京の情報は聞いて損はないな、と思いまして」「思いまして、じゃねぇよ!!」突っ込む土方、流す紫音。そんな様子を見ながら、近藤は一人嬉しそうに頷きながら、「トシ…お前久しぶりに素が出せて嬉しいんだなぁ…」と土方の肩を叩く。かぁっと一瞬にして赤くなった土方は、「勝ちゃん!!」と怒鳴って近藤の頬を引っ張った。「いひゃいっいひゃいぞ、トヒ」「あぁっ土方くん、いくら図星をつかれたからって」「うるせぇっ山南さんまで乗っかるな!!」もはや子供である。紫音はその様子を慈母のように見守ったのだった…。