タゴロローム要塞内へ入った第5連隊は、すぐさま城砦の一角に陣取り、素早く塔の一つを占拠した。「戦闘装備を解くな、油断無く身構えておけっ」ハンベエが檄を飛ばした。ハンベエはまずゴンザロに、連隊兵士達の食事の配給をするよう、他の連隊に交渉に行かせた。ゴンザロ一人では、押しが効かないと見て、ドルバスについて行ってもらった。この交渉は、何の支障もなく成功した。というのは、第5連隊のあまりにも無残な扱われ方に同情していた他の連隊の兵士は思いの外多く、食事くらいは助けてやれ、と積極的に融通してくれたからである。 ハンベエは兵士達に持ち場を離れず、食事だけ取るよう命じた。他の連隊Yaz避孕藥 優思明達は同情してくれていたが、士官連中は、要塞内で許可も得ず塔を占拠し、未だ臨戦態勢を解かない第5連隊を猜疑の目を持って、苦々しく見つめていた。将に一触即発、同じタゴロローム守備軍内での同士討ちが、いつ起こっても不思議でない雰囲気であったが、幸いな事に第5連隊に向けて他の連隊が仕掛けて来る事は無かった。食事も一通り済み、連隊兵士が緊張状態の中ながら、一息ついたのを見て、ハンベエは連隊長コーデリアスの前に立った。「連隊長、そろそろ、守備軍本部に報告に行こう。一人で立てるか?」とハンベエは言った。「報告?」「そうだ。第5連隊は敵軍を掃討して帰還した。その報告に行かなければならないだろう。」「あの連中のところへか?あの人非人どもに報告・・・怒りで血が吹き出しそうだぞ。」「じゃあ、連中相手に一合戦やるかい? 折角生き残った連中も全滅するぜ。それより、報告に事寄せて、本部連中を罵るなり、斬り付けるなりした方がいいとは思わないかい?」 ハンベエ小さく笑って言った。この状況で笑みが出てくる。しかも、皮肉めいたものではなく、屈託のない笑顔である。自責の念と守備軍本部への怒りでいっぱいになっていたコーデリアスは、聞きようによっては辛辣とも聞こえる事を、嫌みのない笑みを浮かべて、さらりと言ってのけるハンベエに、妙に人物の大きさを感じた。豪雨の後にぽっかりと空いた青空を見る思いだった。「なるほど、そういう死に方も悪くない。」 コーデリアスは鞘ぐるみ手にしていた長剣を杖にして立ち上がった。「ドルバス、後を頼む。」ハンベエはドルバスに連隊指揮を任せ、連隊長について守備軍本営に向かった。ドルバスは、俺は留守番かよ、とでも言いたげな、ちょっと不服げな表情を浮かべたが、黙って頷いた。一方、コーデリアスの側近も一緒に行こうとしたが、足手まといになるからとコーデリアスが留めた。コーデリアスは長剣を杖に多少よろつきながら、本営に向かった。何か所も傷を負っており、応急手当ての包帯が痛々しい。ハンベエはコーデリアスの杖を支え持たない方の腕を取り、支えるように寄り添った。守備軍の本営は、城塞の奥にある堅固そうな建物に置かれていた。何十人もの兵士が本営を囲み、警護している。本営――総司令部というのは、人間で言えば頭に当たり、それが破壊されれば、指揮系統が壊滅するために、一番安全、守りの強固なところにあるのは当然である。