その様なことを考えつつ、桜司郎は沖田へ掛ける言葉を見付けられないまま、促されて部屋に戻っていった。 沖田はもう少し此処にいます、と言った。 サア…とそよ風が、桜司郎の背を見送る沖田の前髪を撫でる。土の香りが鼻腔を掠めた。 不意に沖田は口元に手を当てて、何 ... もっと読む

「俺の、言いたいことは分かるよな。…もう、お前さんは優しい田舎の道場主じゃねえんだ。伊東も良いが、俺らの声にも耳を傾けてくれ」   土方の言葉に近藤は何度も頷く。   「済まなかった、歳ッ…。山南君…ッ」   それを聞いた土方は安心したような表情になった。少 ... もっと読む

と言う奴ァ、似てくるもんなのかね。適わねえな…。俺ァ、その目をした奴に弱いんだ」   土方は湯呑みを手に取り、一口啜ると畳の上に置く。そして覚悟を決めたように、さとの目を見返した。   「山南は、脱走したよ。ご丁寧に居場所まで書き置きしてな。今、沖田を向か ... もっと読む

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